(ネタバレ注意)14冊目・三体
- 2019.07.13
- 読書感想文

どうも、さわおです。
今回、紹介する本は劉慈欣(りゅう・じきん)先生の「三体」です。
中国、1967年。文化大革命の真っただ中、葉文潔(イエ・ウェンジエ)は父が批判対象としてリンチに遭い殺されるのを目撃する。
その後、彼女は辛い日々を送っていたが、あるきっかけにより、中国共産党委員会直属の極秘基地「紅岸基地」へ入ることになる。その基地が何のための基地であるかも知らずに……
それから約40年後、ナノマテリアル開発者、汪淼(ワン・ミャオ)の身のまわりでは異変が起きていた。国際的学術組織「科学フロンティア」に関係する物理学者たちの相次ぐ自殺である。汪淼は、軍と警察、外国人も含んだ謎の会議から「科学フロンティア」について探ってほしいと依頼される。
汪淼は嫌々ながらも引き受けた。しかし今度は汪淼の身に異変が起こり始める。自分で撮った写真に奇妙な数字の列が記されているのだ。そして彼はその数字の列の意味を知る。
カウントダウンだ
そして、その後、汪淼に驚くべき現象が……
作品評価=秀
内容に触れる前に1つだけ。
この作品は傑作です。大傑作です。これから書く、本の内容についての記事を見てしまうと僅かながらも作品の楽しみ方を阻害してしまう可能性があります。もし、もう「三体」を読む予定の方がいましたらブラウザバックして「三体」を読み進めることをお勧めします。
今まで紹介した作品ではこのようなことはしなかったので、失礼かなと思いましたが、書かずにはいられませんでした。申し訳ありません。
では、内容の方に触れていきたいと思います。
お……面白かったあ……
この作品を知ったのは「早川書房」さんのツイッターをフォローしていたのがきっかけでした。
いつの頃からか、早川書房さんのツイートに「三体」という言葉がよく目につくようになりました。
「三体? 変わった題名というか、やけにシンプルな題名だな」と、思ったのを覚えています。
ツイートの内容をいくつか見てみると、中国人作家が書いたSF小説であり、世界的にかなり売れているということがわかりました。
「うーむ、中国の小説か。読んだことないなあ……」
中国の作品というと触れる機会があるのはカンフー映画か三国志のドラマぐらいなものであまり詳しくありません。しかもSFとなると、もう想像の範囲外でした。
さらに輪をかけて、私はあまりSFというものが得意ではありません。地球外から来たモンスターがバリバリ人を食うとかいう話は好きですが、ハードなSFになってくるとついていけなくなってしまうのです。
今回は買わないでおこうかなと思っていたのですが、あまりにも、そう、あまりにも早川書房さんの推しが強烈だったので、「発売日に新刊買うことほとんどないし、買ってみるか」とkindle版を購入しました。
少し半信半疑になりながらも、少しずつ読み進めていた結果、通勤途中で、仕事場で、入浴中で、夢の中で、「三体」について考える日々が読み終わるまで続きました。
私は映画を結構見ますが、たまに「こんな作品と出会えるから映画を見るのはやめられない」という作品に出会えます。
まさに、「三体」はこれから私が本を読み続ける原動力となった作品だと思います。
現代の世界を舞台にしたSF
皆さんはSFというと何を思い浮かべるでしょうか?
私は、近未来の都市、宇宙船、異星人などを思い浮かべます。
ただ、これは私の想像力の問題なのですが、それらの描写が細かければ細かいほどディティールがよくわからなくなってしまい、しまいには挫折してしまうことが多くあります(映画だと映像で見せてくれるので問題なし)
「三体」は1967年の中国から物語が始まります。最初の1967年の話の中でSFチックな話はほとんど登場しません。1人目の主人公、葉文潔の文化大革命での苦難が描かれるのみです。
これは、私のようなSFが得意ではない人間にとって、とても読みやすいことこのうえないです。序盤から独自の固有名詞を多く出されてしまうと、どうしてもきつくなってしまいます。
と言いますか、この「三体」には独自の固有名詞はほとんど出てきません。その代わり、難しい理論の話などはよく出てきますが。
難しい話はわからなくて良い
2人目の主人公の汪淼はナノマテリアルの開発者です。
ナノマテリアル……?
ナノマテリアルの開発は応用研究です。
応用研究……?
それで、自殺した研究者は基礎研究の学者でした。
基礎研究……? マクロスケール……? ひも理論……?
……?
……
…
細かいことはいいんだよ!
実際のところ、このような用語や理論を知らなくても全く問題なく楽しんで読める作品になっています。ただ、知っていればもっと面白くなるのは間違いないでしょう。
このように、自分の知らないことについて知りたいと思わせてくれる本はなかなか無いと思います。
SFというのは、知的好奇心をくすぐられる作品のことを言うのかもしれませんね(また、知ったようなことを……)
「三体」とは何か?
作中に出てくるVRゲームのことです。
「は? ゲーム?」
そのゲームが出てくるまで結構、緊張感のある場面が続いていたので題名の「三体」がゲームのことだったと知ったときは驚きとともにちょっと拍子抜けしてしまいました。
ただ、この「三体」というゲーム非常に重要なキーアイテムになっています。
この作品の視点を大きく分けると、1967年から現在にかけての葉文潔の視点、現在の汪淼の視点、そして「三体」をプレイする汪淼の視点に分かれます。
「三体」というゲームは非常に異様です。長く日が沈んだままになったり、逆に長く日が昇ったままになったりする世界で過去の偉人たちと会話をしながら文明が壊滅しない解決策を見出していくゲームと言ったらいいんでしょうか?
ゲームというには複雑すぎる「三体」ですが、これには驚きの真実が隠されているのです。
魅力的な登場人物たち
「たち」と書いていますが、私はもう警察官の史強(シー・チアン)が大好きですね。理知的な学者や軍人がいる中で、はじめて登場した時からかなり粗暴な感じが出ており主人公の汪淼も「最も嫌いなタイプの人間」と表しています。
しかし、話が進むにつれ、史強のタフさ、豊富な経験、警察としての勘の鋭さが発揮され、嫌悪感を抱いていた汪淼も「ここに史強がいてくれたら……」と考えることが多くなっていきます。
学者、軍人が多数登場するこの作品の中で、史強はおそらく一番、読者に近い存在であり、ヒーロー的存在なのだと思います。
その他にも、癖のあるキャラクターたちが多く登場するのでとても面白いです。
翻訳について
中国の小説を買うとき一番気になったのは翻訳でした。洋画の字幕でも少しでも違和感があれば作品の印象は変わってきますし、翻訳がなじめなくてどうしても読めない本などもありました。
今まで見たことのない「中国語の日本語訳」ってどうなるんだろうと少し不安でした。
結論から書きますと、全く心配する必要はありません。
めちゃくちゃ読みやすいです‼ いやほんとに。
訳者あとがきで本作を翻訳された大森望先生の翻訳時の話が書かれていますが並々ならぬ苦労があったようです。
その苦労が非常にわかる文章になっています。なんてったってまるで初めから日本語で書かれていたのではないかと錯覚させられてしまうほどのよみやすさだからです。
訳者の方には本当に感謝の念しかありません。(余談ですが「リア充」という言葉が出てきたときはクスっとしました)
結局、過度なネタバレはできなかった
現在、3000文字ほど書いてきましたが、この作品の核心に触れる部分はほぼ書いていません。
ネタバレする勇気がないのです。
この作品は今後の私の読書人生を大きく左右した作品になりました。読んでいない方には是非とも読んでほしいのです。
この「三体」は3部作の1作目です。ぜひぜひ「三体」を読んで、一緒に三体難民になりませんか?
では、また!
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