(ネタバレ注意)18冊目・孤狼の血

(ネタバレ注意)18冊目・孤狼の血

どうも、さわおです。

今回、紹介するのは柚木裕子先生の「孤狼の血」です。

昭和63年、広島。警察官、日岡秀一は呉原東署捜査二課に配属となった。二課は二つの係があり、日岡が配属したのは暴力団係。呉原は抗争事件などが頻発する危険な場所であるので、初めて刑事になった者の勤務先には異例であった。

日岡は暴力団係の班長である大上章吾のもとで働くことになるが、大上の警察官としての立場を逸脱した行動に驚愕することになる……。

作品評価=

神は細部に宿る

以前、私が小説を書いてみようかなと思ったとき、自然とジャンルがファンタジーになっていました。

「だって、自分で世界を創れるって楽しいじゃない」

というのは、大嘘です。実際は、

だって現実のことを書くと自分の無知っぷりが露呈するから……

が、本当です(ただ、ファンタジーであっても稚拙なものができることには変わりはない)。現実世界のことを書くとなると、まず、題材に関する知識が必要になります。基本的なことでしょうが、題材によっては大変だろうなと思い躊躇してしまいました。

 

さて、この「孤狼の血」という作品、警察と暴力団の駆け引きが話の中心となっています。警察官の大上は同僚、そして、ときに暴力団と協力しながら上手く立ち回っていきます。

そこで重要になってくるのが、この警察官はどの署のどこに所属しているのか、そして、この暴力団はどの組のどのような地位にあるのかなどの人物プロフィールです。

この小説、これが凄い。

作品内で、二課の暴力団係、知能犯係の面々のプロフィールが紹介されていくのですが、しっかり人物設定がされています。主人公である日岡や、特に大上のプロフィールは本当に細かく書かれており、実際にこの人物は存在するのではないかと錯覚を覚えるほどです。他の二課の暴力団係の人間像も個性的で面白いです。

警察組織というのもなかなかに複雑でしょうが、暴力団組織となると……本当に訳がわからないぐらい凄いです。

誰がどの組織に所属しているのかぐらいは作れると思いますが、この組はこのような成り立ちで、どこと兄弟の盃を交わして、こういう因縁があるから仲が悪くて……という話がしっかりと作品内で書かれています。

また、少し話が変わりますが、広島の方言だったり、専門用語がこの人物たちの間を行き交い、非常に現実感を醸し出すものとなっております。

これらは、作品の著者である、柚木裕子先生の徹底した調査、取材からなるものでしょう。

呉原という地名は架空のものらしいですが、この作品内では徹底した人物、場所、言葉の作りこみにより、恐ろしいほどに呉原に生きる人間の息遣いが聞こえてきます。

過激さよりは張り詰めた緊張感

最近の極道ものと言えば北野武監督の「アウトレイジ」を思い出します。酷いリンチや拷問、殺し屋による暗殺、まさに命の奪い合いをメインにした映画でしたが、「孤狼の血」ではあまりそういう場面はありません。

序盤にある人物が暴力団に拉致され、中盤に拷問され殺されたことが判明しますが、どのようなことをされたのかということは作品中では書かれていません。なので、きつい描写が苦手だという方も読める作品だと思います。

過激さの代わりにあるのは全編とおして感じることができる緊張感です。

暴力団同士の戦争が始まってしまうのではないかという緊張感、そして、暴力団に密に接する大上と日岡に迫る見えない監察官や記者の存在、そして、リスクを伴う捜査をし続ける大上の生死は。私は、とてもハラハラしながら読み進めていました。

ちなみに、「孤狼の血」は映画化されていますが、友人からの話によると結構、過激な描写があるようです。

章ごとに区切られた見事な構図

この作品の変わった特徴として、章のはじめにその章で起きることが日誌として書かれています。所々、黒塗りにされたものですが、読んでいる最中、これはいったい何の日誌なのだろうかと疑問を覚えました。

最後まで読んでみてそれの意味がわかったとき、なんと計算された作品なのだと感心しました。



まず、読むべし。

まさに、極上のエンターテイメント作品です。この素晴らしい読了感。是非味わってみてください。

そういえば、作中に出てくるライター欲しいなーと思ったのですが、映画が上映した時に受注生産されていたようですね…ゲットできずとても残念です。作中の大上のようにこのライターでショートピースを吸ってみたいなと思う今日この頃でした(ショートピースはきついのでショートホープで勘弁してくだせえ……)

では、また!