(ネタバレ注意)20冊目・月の落とし子

(ネタバレ注意)20冊目・月の落とし子

どうも、さわおです。

今回、紹介するのは穂波了先生の「月の落とし子」です。

月面調査船、オリオン3号に乗った5人の宇宙飛行士に非常事態が発生する。

何億年もの間、太陽光が当たらないクレーター、”シャクルトン・クレーター”の土壌を調査中、2人の宇宙飛行士が突如、吐血したのだ。

生命反応が消えた2人を回収するも、残りの飛行士も吐血、次々と命を落としていく。

唯一、吐血しなかった日本人飛行士、工藤晃は地球への帰還を諦め、宇宙の闇に消えることを決断する。しかし、多くの不運が重なり、晃の母国である日本へと機体が落下を始めてしまう。

JAXA職員で晃の妹でもある、工藤茉由は地上から燃える機体を見つめていた。

地対空ミサイルによってふたつに割れた機体はひとつは海へ。そして、ひとつは市街地にあるタワーマンションへと吸い込まれていった……。

作品評価=

第9回アガサ・クリスティー賞受賞作品であるのだが……

アガサ・クリスティー」という人物名を聞いて何を思い浮かべますか? 私はデヴィッド・スーシェ演じるエルキュール・ポアロの顔が思い浮かびます。

「ミステリの女王」と呼ばれる彼女の名を冠した賞である「アガサ・クリスティー賞」に選ばれる対象はもちろん「ミステリ」です。

では、「ミステリ」とは何か? 知識の無い私がネット情報を斜め読みしたところによると、推理小説、謎が存在しそれを解き明かしていく物語といった感じでしょうか。

なぜ、こんなことをつらつらと書いているかというと、この「月の落とし子」を読む前に知っておいてもらいたいことがあるからです。

それは、この作品にミステリ要素を期待すべきではないということです。

注目すべきは「知識の描写力」

この作品で凄いと思ったところは、著者の宇宙関連の知識、疾病関連の知識の豊富さとそれを描写する力であると思います。

謎の病原菌に侵された宇宙船の中での宇宙飛行士たちの行動、地上でパンデミックが起きたときの感染の封じ込めの方法や政府の動向などなど、「ああ、なるほど。原因不明の病原菌でパンデミックが起きた場合こうなるのか」と非常に納得させられます。

そして、それらの知識をとてもわかりやすく書いてあるのも好感が持てます。結構難しいことが書かれていたりもしますが、非常にテンポよく、すらすらと読むことができました。



なぜ、ミステリ要素に期待すべきでないのか。

私は読書家ではありませんが、映画はよく見ます。

「宇宙空間の未知の物体との遭遇」というものは非常にワクワクさせられる題材でありますが、非常にありきたりな題材でもあります。

そこで、クリエイターはいろいろひねりを利かせてくる訳なのですが……この作品、恐ろしく愚直なまでに捻りがないのです。

この作品を1文で表すならば、

月で発見された未知のウイルスを乗せた宇宙船が日本のタワーマンションに突っ込みパンデミックが発生する

といった感じです。まさにこれだけなのです。

感染ものミステリの最も重要な部分、ウイルスに対する対抗策も途中でわかるのですが、「えっ! それだけ?」というものでした。

「ウイルスの謎を解き明かす物語」というミステリメインの作品ではないのです。

サクサクとSFを読みたい方におすすめ

人物描写、宇宙船故障の謎、違和感のある文章、ラストの展開と私には合わないなと思う点が多々ある作品でしたが、前述したとおり、読みやすさと描写力はとても良いと思える作品でした。

読みやすさで言ったらライトノベルに通ずるところがあると思います。ハードなSFはちょっと……という方はこの本を選んでみてはいかがでしょうか。

では、また!