「ヘレディタリー/継承」-こんな恐ろしい映画見たことが無い(ネタバレ&閲覧注意)

「ヘレディタリー/継承」-こんな恐ろしい映画見たことが無い(ネタバレ&閲覧注意)

どうも、さわおです。

テレビをつけると嫌なニュースばかり……流石に落ち込みますよね。

気分転換に映画でも見るかとディスク関連が保管している棚を見てみると、ふと気づいたことが。

何というか、暗い作品ばかりだなあ」と。しかし、これには理由があるのです。

暗い気分は明るい作品で解消できるのか?

どうしようもなく落ち込んだとき、皆さんはどうするでしょう?

「友人に愚痴をこぼす」、「運動をする」、「部屋にこもる」、まあ、いろいろあると思います。

私の場合、俗にいう「暗い作品」を見るというものがあります。

「何考えてんだ、余計暗くなってしまうだろう」と考える方もいると思いますが、逆に明るいコメディや王道アクションなどを暗い気持ちのときに見ると見事にダダ滑りしてしまい、「時間の無駄だったな……」ということが多いです。

暗い気分のときこそ鬱な作品! 今回は、今、大注目の監督であるアリ・アスター監督の作品「ヘレディタリー/継承」を紹介します。ネタバレ注意です。あと、グロテスクな表現や過激な表現があるので閲覧注意です。



ヘレディタリー/継承

吹き飛ぶ子供の首、己の顔を机に叩きつける青年、そして、今作での凄まじい演技が光るトニ・コレットの顔! 未知の現象を描きつつ、ひとつの家庭が崩壊していくさまを容赦なく見せつける、鬱というかトラウマ必至の作品。

「主人公アニー(トニ・コレット)の母が死んだことををきっかけに不思議な現象が起こり始める」という物語ですが、ホラーというジャンルにとらわれない傑作です。

上記したポイントにも書いていますが、やはり、序盤の見どころはアニーの娘チャーリーの事故のシーンでしょう。チャーリーの兄、ピーターが参加したパーティに同行したチャーリーがアレルギーの発作を起こし、ピーターが急いで妹を車で病院に運んでいたところ、チャーリーが窓の外に頭を出してしまい、電柱に衝突、チャーリーの首が飛んでしまうシーンです。

このシーンの秀逸なところはその後で、事故を起こしたピーターは後部座席にあるチャーリーの遺体を見ることなく、そのまま家へと帰り、自分のベッドに横たわります。そのまま、朝になり、アニーの悲痛な叫びがピーターの耳に飛び込んできます。茫然自失のピーター、蟻の群がった道端に転がるチャーリーの首。いやーキツイです。

このピーターの行動は非常にリアリティがあり好きです。普通の映画であればチャーリーが死んだ瞬間、ピーターが後部座席を見て「NOOOOOOOO!!!」とか叫んでいると思います。

「家に帰って、寝て、朝が来たら何事もなかった日常が広がっているのではないか?」

真っ白になった頭でピーターはベッドに横たわり、朝、自分の母の叫びを耳にする。どんなホラー映画の殺人鬼に追われるより、これほどの地獄があるでしょうか?

その後、アニーの家庭は色々な要因が合わさって崩壊していくのですが……あ、そうだ、この映画、色々不可思議なこと起こります。

事故や家庭崩壊の部分が強烈過ぎて完全に忘れていました。

顔芸? トニ・コレットの怪演が怖い。

今作の役者陣はまさに素晴らしいの一言です。特に女性陣、アニー役のトニ・コレットとチャーリー役のミリー・シャピロはこの映画に絶対必要な役者で、この二人によってこの作品の質、恐怖が底上げされているのは疑いようもありません。

ミリー・シャピロの演技は「無言の威圧感」といいますか、画面に登場するだけで「何か不吉な感じがする……」といった感じですが、トニ・コレットの演技がその逆で、驚嘆する、泣く、怒る、そして叫ぶといった変化のある演技が多いです。この二人の演技が対になっていて面白いですね。

特に注目すべきはトニ・コレットの顔です。

「ママーーーーー!」とチャーリーが憑依したアニーの顔は、「顎が外れるのでは……」と心配になるほどとんでもない顔ですし、食事中にピーターに怒りをぶつけるシーンの顔もただただ怖い。

ホラーに出てくる女性主人公のことを「スクリームクイーン」というそうですが、まさに絶叫の女王ですね。

ん……? 今何か……い、いる!!!

この作品にモンスターの類は登場しません。なので、いきなりモンスターが登場して観客を驚かせにかかる手法はとられていません。

代わりにとられている演出は、画面の中に何か得体のしれないものが自然と映りこんでいるというものです。例をあげるならば心霊写真に近いでしょうか、目を凝らしてみると見える感じです。ただ、今作のは霊ではないですが。

この演出がたまらなく怖いです。

バーンっと驚かせる手法はその時はビクッと驚きますが、その後、恐怖が残ることはありません。強いて言えば、次のその演出に身構えるぐらいなものでしょうか。

しかし、この自然に画面上に異質なものを存在させる手法というのはかなり精神的にダメージを受けます。

「あ! ああ、嫌なものを見てしまった」

という感じで。

私はこの映画は何度か鑑賞して、家族とも見たのですが、

「あそこにいるよ」

と、気づいてない人間に言うと「うわっ!」と驚きます。誰かと一緒に見るのも楽しいかもしれませんね(やりすぎは禁物、一緒に映画見てもらえなくなります)。

この映画で唯一、和んだシーン

陰鬱な展開が続く作品ではありますが、一つ非常に和んだシーンがあります。

それはアニーが天井裏で母の腐乱死体を発見するシーンなのですが、アニーが夫に「天井裏に母の死体がある!」と伝えると夫は、「まーたこの女、何言ってんだ」というような顔でしぶしぶ天井裏を見に行きます。

基本的にこういう場合、もう死体が消えていて、夫が妻に「何もなかったよ、疲れているんじゃないか?」なんていうシーンがよく使われていたりするのですが、夫が天井裏に上ると、

「うおおぁぁ!!!」

という夫の素っ頓狂な悲鳴が聞こえてきます。このシーンは何か可笑しかったです。

結局、何が原因でこんなことに?

ネタバレしていくと最初書いていましたが、そこには触れないでおきましょう。全部、内容を明らかにするのもつまらないですし。

禍々しいながらも、どこかすがすがしいエンディングを迎える今作、オススメです。