鬼平犯科帳を読んでます(一)【新装版と決定版の比較、感想など】

鬼平犯科帳を読んでます(一)【新装版と決定版の比較、感想など】

どうも、さわおです。

久しぶりに「日々の読書日記」のカテゴリーを更新するわけですが、最近、池波正太郎先生の作品、「鬼平犯科帳」を読んでおります。

知らない方のために説明しますと

江戸時代、幕府の特別警察「火付盗賊改方」の長官である長谷川平蔵。人呼んで「鬼の平蔵」が活躍する時代小説。

ですね、非常に大雑把ですが。

多くの人情が交差する様が非常に面白く、原作、TVともに長編シリーズとなったのも非常に頷けます。

この一巻では八編の短編が収録されています。一つずつ紹介していきますよ。



唖の十蔵

火付盗賊改方に属する同心、小野十蔵は密告者からの情報で助次郎という男を捕まえようとしていた。しかし自宅で助次郎は死んでおり、側には助次郎の女房で彼を殺したおふじがいた。おふじの側に居るうちに十蔵は彼女に情がうつってしまう……

初っ端から放送禁止用語で始まる鬼平犯科帳です。

TVシリーズの鬼平をチラリしか見たことなかったので、文章中に

小肥りの、おだやかな顔貌で、笑うと右の頬に、ふかい笑くぼが生まれたという。

__鬼平犯科帳 1 29項

と、出てきたときはびっくりしました。ただその後、なかなか白状しない盗賊に拷問を加えた平蔵はやはり「鬼」でしたね。足の甲に五寸釘刺して、そこに蝋燭を立てるって……まさに壮絶です。

今回のメインキャラクターは平蔵ではなく、十蔵です。役職をとるか女への情をとるか。最後の哀愁漂う終わり方は素晴らしいですね。

本所・桜屋敷

平蔵が剣術の稽古をしていた「桜屋敷」へ赴くとそこには古い剣友・岸井左馬之助の姿が。二人はそこで思い出す。二人が昔、恋焦がれた女性、「おふさ」のことを……

一話完結のように見える「鬼平犯科帳」ですがこの話は「唖の十蔵」から繋がっています。以前、登場した人物から派生的に話が広がっていくところもこの作品の面白さのひとつですね。

平蔵と左馬之助の友情、そして、その二人の「おふさ」に対する恋心という平蔵の青春を描き出した短編です。二十年経った平蔵、左馬之助、おふさがどのように変わってしまったのか、時間の流れとは時に残酷であるようです。

血頭の丹兵衛

「血頭の丹兵衛」という怪盗が江戸市中を荒らしまわっていた。血頭一味のやり方は急ぎ盗み(いそぎばたらき)というもので、「盗まれて困る人間には手を出さない」、「盗みをするとき人を殺傷しない」、「女を犯さない」という真の盗賊の掟から外れたものだった。

火付盗賊改方の長官を退いていた平蔵は呼び戻され捜査に入るが、獄中に監禁されている「粂八」から意外な情報を耳にする。

現在、急ぎ盗みしている「血頭の丹兵衛」は偽物であると……

「唖の十蔵」で壮絶な拷問を受けていた粂八がメインの話です。

盗賊というものにも貴賤があるというのは面白いですね。平蔵も役目柄、もちろんどんな盗賊でも捕まえますが、

「ちからまかせの押しこみ強盗なら、悪党であれば誰にでも出来る。女を犯し、人を殺すというのは、真の盗賊のなすべき業ではないのだ」

___鬼平犯科帳 1 109項

という言葉が彼から出てくるというのは、平蔵個人といいますか、この作品の世界観での「盗賊に対する考え方」が如実に現れている場面だと思います。

浅草・御厩川岸

与力・佐嶋忠介の「狗」である岩五郎のもとに盗みをしないかという依頼が舞い込んでくる。盗みをする頭目は「海老坂の与兵衛」であった。岩五郎は以前、大盗賊であった与兵衛に憧れを抱いていたのだった。真の盗賊の掟を守り、完璧な手筈を整える一味に「狗」としての役目を持ちつつも心惹かれていってしまう……

今までちょこちょこ出てきていた密告者である岩五郎メインのお話です。

「血頭の丹兵衛」という極悪非道の盗賊から、どこか颯爽とした人物を頭に据える「与兵衛一味」に話がシフトするのは面白いですね。

しかし、一つの盗みに綿密な計画をたて、刃傷沙汰をおこさないというのは海外ドラマの「スパイ大作戦」を思い出しました。

老盗の夢

元盗賊の蓑火の喜之助は昔の女の墓参りをするだけという空虚な老後を迎えていた。

しかし、茶屋の女おとよと知り合い、一夜を共にすることで六十七という年齢にもかかわらず血がたぎるのを覚えた喜之助はおとよのために最後の盗みをすることを考える……

この時代の六十七ってどうなんでしょう……(いや、現代でもか)

喜之助が精力を取り戻すところは喜劇的で面白く、このまま愉快な感じで終わるのかなと思いきや……

いやあ、シンプルにハッピーエンドとはならないものです。

暗剣白梅香

巡回中の平蔵が何者かに襲われる。

何とか敵を退けた平蔵であったが、その暗殺者は相当な手練れであった。

不思議なことにその者からは怪しげな香水の匂いが……

平蔵と謎の暗殺者との対決という胸躍る展開ですね。

ようやく時代劇の見せ場である剣劇アクションとなるのかと思いきや、多くの伏線が張り巡らされたミステリーな展開です。

そうはいっても序盤の平蔵と暗殺者の闘いは勢いよく描かれており、非常に面白かったですね。

アクション、ミステリー、人情、意外な結末と素晴らしい短編になっており、この一巻の中では一番好きな話でした。

座頭と猿

盲目のふりをしている盗賊、彦の市は腸の煮えくり返る思いだった。自分の女が他の男と情事を交わしていることを知ったのだ。

しかし、その男、同じ盗賊である徳太郎であった。

大きな盗みの計画の一部である二人は一人の女によって惑わされていく……

ちょっと印象の薄い回です。

女を思い通りにできると思っていた二人が実のところ……という話ですね。

何かしらの陰謀が渦巻いていることを匂わせる話になっており、今後の話に注目です。

むかしの女

娼婦であったおろくはひとつの金もうけの方法を見つける。

昔の客の前に姿を現し、口封じの金をせびり取るというものであった。当初はうまくいっていたおろくであったが「雷神党」と呼ばれる浪人たちがそのことを知って事態は急変する……

雷神党の恐ろしさが際立つ話です。

今まで盗賊という残虐非道な一味もあれど、そうでない者たちもいる人間たちが登場してきましたが、それは欲に動かされてのこと。日ごろの鬱憤を晴らすために捨身で乱暴狼藉を働く浪人たちは、この時代の人心の荒廃を表しているのかもしれませんね。

 

一巻の総括として、上にも書きましたが、時の流れによる人の変化というものの話が多くを占めていると思います。

時の流れによって変わってしまった者、変わらなかった者。どちらが良いというわけではなく、そこで発生する人間ドラマが人情味たっぷりに描かれています。いやはや、面白い!

 

新装版と決定版の比較

実は私、以前出版されていた新装版の一巻も持っているので試しに比べてみました。

新装版のカバーはシンプルであるのに対して決定版は歌川広重の「名所江戸百景」がカバーとなっています。

では、中身はどうでしょう。

先が決定版、後が新装版です。滅茶苦茶わかりにくいですが決定版の方が文字が大きくなって見やすいです。そのため、

このような感じで決定版の方が分厚くなっており、60ページほど増えております。分厚い分、値段も100円ほど増えていますが、今から購入するのであれば読みやすい決定版をお勧めします。

 

結構、ながながと書いてしまいましたが、面白かったので今後も読んではこの「読書日記」書いていこうと思います。

それでは、また!