ジョークと皮肉で笑いとばすしかない「世にも危険な医療の世界史」

ジョークと皮肉で笑いとばすしかない「世にも危険な医療の世界史」

黒澤明監督の「赤ひげ」だったでしょうか。

暴れないように患者を縛りつけ、悶絶する患者の開腹手術をしているシーンがあったと思います。もちろん、麻酔無しです。他の映画や漫画で医学、特に、麻酔が開発される前の時代の手術の描写をを見ると、「ああ、現代に生まれてよかった……」と、ひしひしと感じます。

今回、紹介するリディア・ケインネイト・ピーダーセン先生の「世にも危険な医療の世界史」には、「現代に生きているだけで幸せです……」と感じられる多くの時代、場所の、多くの「医療?」が記されています。

子供の夜泣きにはアヘンを! 頭痛には熱した焼きごてを! 大体の病気は血を抜けば治る!

嘘のようなホントの話。

作品評価=

 

読めば読むほど押し寄せてくる「トンデモ医療」

現代の人は、具合が悪いと思ったときどうするでしょうか?

横になって休んだり、薬局に行って薬を買ったり。一番良いのは病院に行くことでしょう。何といってもお医者さんはきちんと勉強しており、専門の病気を治してくれる先生なのですから。

では、歴史を遡って、過去のお医者さんはいったいどんな施術を行っていたのか? それがわかるのが本著というわけであります。

「痛み止めにケシをつかっていたとか?」「やはり、信心深い昔の人は神に祈りをささげていたとかだろうか?」「日本でもエレキテル何てのがあったな、電気治療とかそんな感じ?」

 

そんな生易しいものではなかった……

水銀を飲む、アヘンを吸う、血を抜く、皮膚を炙る……治療なのか、それとも患者を苦しめたいのかよくわからない医術がこの本には二十八章に分かれて書かれています。

「どうせ、極端なヤブ医者の話だろう?」

そう思う方もいらっしゃるかもしれませんが、水銀の愛用者では、ナポレオン、エドガー・アラン・ポーなど。瀉血(血を抜くこと)ではモーツァルトが死ぬ前の一週間で二リットルもの血液を瀉血されたと書かれています。

要するに、このような現代人が考える極端な医療は、ど田舎の民間療法などではなく、その時代のメジャーな医療行為だったということです。

万能薬と「生」への強い渇望

多くの恐ろしい医療行為が書かれている本ですが、結構共通しているのは、この医療は「何にでも効く万能薬」である、という触れ込みです。

水銀を例にとってみると、

気分の落ち込み、便秘、梅毒、インフルエンザ、寄生虫など、どんな症状であれ、とりあえず水銀を飲めと言われた時代があったのだ。

と本著で記されています。

後の章の医療方法にも、似たような記述があり、どの時代の人間も、「何とか感染症にかかりたくない」「若々しくありたい」そして「生きたい」という感情があるのだと当たり前のことながら実感させられます。そのために人は万病に効く、「人智を超えた霊薬」を求めていたのでしょう。

恐ろしい話は笑い飛ばすしかないだろう!

ここまで、悲惨な医療が過去行われていたということを書いてきましたが、本著を読むのにそんなに固くなる必要はありません。むしろ、読んでいたら笑い転げること必須です。

何故かというと、この著者であるリディア・ケインネイト・ピーダーセン先生の文章はユーモアと皮肉に満ち溢れていて、下手なコメディ映画を見るより何倍も笑えます。

流石に不謹慎だろうと思う方もいるでしょう。しかし、ここまで酷いとなるとあまりに陰鬱になりすぎて読む方が病気になりそうです。

著者は過去の最悪な医療行為をジョークと皮肉を交えながら説明し、それが、現在どうなっているのかも記しています。

上記しましたが、著名な人物たちがこのような恐ろしい医療行為をしていたということも記してくれるので、その人物に対する印象が変わっていくのは面白いですね。

大笑いして読み終わった後には……

あー面白かった、と読み終わった後、私は背筋の冷たさを感じました。

ジョークを交えようが、皮肉ろうが、やはり恐ろしいものは恐ろしいです。後々、効いてきますね、この本。

難しい医学書ではまったくありませんので、怖いもの見たさで読むも良し、過去の医術に興味があって読むも良し、そして、現代の怪しげな健康食材や健康法に疑問を抱いている方、ハマっている方も読んでみるといいと思います。何十年後、何百年後かにはその時代の人たちに笑われているかもしれません。

それでは、また!