【アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」】-アイヌ文化の入門書であり、漫画の裏設定を知ることができる良書
- 2020.02.24
- 読書感想文

突然ですが「鬼滅ブーム」がすごいですね。私もその流れに乗ってみようと、「鬼滅の刃」を書店で探したのですが、どこにも一巻が無い! 酷いところでは全巻無い! といった感じでした。
せっかく書店に来たのだからと、以前から気になっていた野田サトル先生作の「ゴールデンカムイ」の一巻を購入したところ、新書コーナーにも野田先生の描いたアシㇼパさんを発見。それが中川裕先生の【アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」】でした。
漫画「ゴールデンカムイ」で出てくる多くのアイヌ文化。アイヌって女性も狩りをするの? あの名シーンの意味は? そして「オソマ」!
アイヌ文化をまったく知らないが興味のある人や「ゴールデンカムイ」を深く知りたいという方には必携の書。
作品評価=★★★(最大★三つ)
わかりやす過ぎるほどわかりやすい、アイヌ文化入門書
「いや~活字とか読む気しない、早く北海道の冒険活劇漫画を読みたいぜ!」という方は、早速「ゴールデンカムイ」を一巻から読むことをお勧めしますが、「もう、最新巻まで読んでしまった」という方や「漫画、全然読んでいないけどアイヌ文化には興味があるな」という方にはこちらの本をお勧めしたいです。
私がアイヌ文化で知っていたことはTVゲーム「うたわれるもの」がアイヌ文化をモチーフにしていたということぐらいでした。要するに、ゼロですね。
ただ、アイヌ文化といいますか、色んな文化、風習には興味がありましたので、漫画を読む前に読んでみようと思った訳です。
読み終わっての第一印象は「非常にわかりやすく、読みやすい!」ということでした。
文化だったり歴史だったりの本は、結構硬めの文章が多く読むのに四苦八苦することがありますが、中川先生の語りかけるような文章はとても読みやすいです。さらに、所々に「ゴールデンカムイ」の挿絵があり、しかも、第五章では野田先生の描きおろし漫画が挿入されています。おそらく、アイヌ文化入門書の中では一番わかりやすい本ではないでしょうか。
わかりやすい本であるが、アイヌ文化は奥が深い
第一章で「ゴールデンカムイ」の「カムイ」とは何か? ということが解説されます。
カムイはアイヌの精神世界を知る上で不可欠の言葉で、これがわからないとアイヌ文化は何もわからないと言っても過言ではありません。
アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」-16項
解説を読んでいると、「ほぼ周り全てのもののこと」で、はじめは「物に神が宿るという、つくも神みたいなものかな?」と思っていたのですが、どうやら違うようです。著者は「環境」と訳していますが、この「カムイ」という言葉はなかなか奥深い言葉のようです。ここでアイヌ文化初心者の私が「カムイ」について語るのもアレなので、詳しく知りたい方はこの本を買いましょう。
他にも漫画で出てくる制裁棒と呼ばれる「ストゥ」の意外な使い方や、子供は大きくなってから名前を付ける文化の意味など興味深い慣習が数多く載っています。
一番、面白いなと思ったのはアイヌの人たちが「虹」を恐れていたという話です。
「何で?」と疑問を持つ話ですが、その理由には非常に説得力があり、アイヌの人々の価値観に少し触れることができる、楽しめるものとなっています。
どの順番で見るとベストか?
この【アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」】には、漫画「ゴールデンカムイ」の重要なネタバレが書かれています。ネタバレがどうしても嫌だという方は最新巻まで読んで、この本に手を付けたほうが良いでしょう。そうでなく、ネタバレは気にしないよ、という方はこの本から読み始めたほうが漫画の作中に出てくるアイヌ文化をより深く知ることができ、楽しめると思います。あと、忘れてはいけないのは「アニメ版」です。動画になることでアイヌ語の雰囲気などがしっかり掴めるのでこちらも視聴をお勧めします。
ただ、アニメ版は結構カットシーンがありますので、原作本を読んだ後に視聴することをお勧めします。
アニメ版第三期が決定した「ゴールデンカムイ」ですので、今こそアイヌ文化に触れるチャンスです。是非、読んでみてください。面白いです。
では、また!
-
前の記事
「悪の法則」ー乾いた絶望に魅了される 2020.02.17
-
次の記事
「背の眼」-完全なホラーかと思いきや…上質なミステリー作品 2020.04.27