「忍びの国」-時代小説初心者でも大丈夫、秀逸なエンターテイメント小説

「忍びの国」-時代小説初心者でも大丈夫、秀逸なエンターテイメント小説

今回、紹介する作品は和田竜先生の「忍びの国」です。

戦国時代、伊賀の忍「無門」は伊賀の国一の忍びであるが、怠け癖をもっており、武家の娘を妻にしようとするも稼ぎの無さをとがめられ、銭を稼ぐことに困窮していた。

そんな折、織田信長の次男である織田信雄はあることがきっかけで伊賀攻めを決意、重臣たちとともに策謀を練る。

しかし、それらは全て伊賀の忍びたちの謀略のものでもあった……

織田、伊賀、そして無門の戦がはじまる。

作品評価=★★(最大★三つ)



史実とフィクションが入り混じるが読みやすい娯楽作品

この物語は天正六年(1578年)に起きた第一次天正伊賀の乱が主になっています。

史実が入ってくるとなると、「読みにくいのではないか?」「歴史について知っておかねばならないのではないか?」という気持ちになってくるものですが、この作品ではそのような心配は無用です。

織田信長がどのような人物か、伊賀は忍者の国、それぐらい知っておけば問題ないと思います。もちろん天正伊賀の乱についての知識を持っていればもっと作品を楽しめると思いますが、私のようにこの作品を読んで天正伊賀の乱について調べてみても、また楽しめると思います。

それに、作品の主観が現代からの三人称になっており、所々で史実にもとづく解説が入るので、その点でもまた楽しめる内容です。

「忍者もの」である今作ですが、あまりに奇抜な術の類は出てこないので(無門の異常な強さは除く)、史実とフィクションが上手く混じっていて、読んでいてあまり違和感のない作品になっています。

俺Tueeeeeeならぬ無門Tueeeeee、魅力的なキャラクターたち

怠け者で嫁にはうだつが上がらず、しかし、忍びの腕は随一、強い、ひたすら強い。上司である百地三太夫には無礼な口をきいてもお咎めなし。「ラノベの主人公か!」と突っ込みたくなるような主人公ですが、よくよく考えてみると時代小説の主人公というと卓越した武芸者であることはよくありますね。

そんなに気にすることないか……と思いつつも、やはり気になるその異常なまでの強さに

「うーん……強すぎて主人公に感情移入できない……」

と、なっている自分がいました。

どちらかというと、敵側にあたる織田信雄やその重臣である日置大膳などの感情や人間関係が面白く、「織田軍、勝たないかな……」とか思っていました。

しかし、本作の見どころ、大筋がわかったとき、無門というキャラクターが非常にかっこいい、魅力的なキャラクターに見えることになります。

「忍びの国」の見どころ、それはまさに「忍び」という特異な集団です。

全面にでてくる「忍び」の非情さ

「__この者どもは人間ではない」

「忍びの国」68項

伊賀の国での小競り合いで無門に弟を殺された下山平兵衛のことばです。この後、平兵衛は織田方に裏切ることとなります。

義や情で動くことは無く、銭のために卑怯な戦法もいとわない「忍び」の恐ろしさがこの作品の全編で描かれています。そして、普段は怠け者で冗談ばかり言っている無門こそ、まさに骨の髄まで「忍び」というものが染みついている人間なのです。

そんな無門が武家の娘、お国、織田信雄、日置大膳などと交流することでどう変化していくのか、そしてどういう結末を迎えるのか、そこがこの作品の一番の面白さだと思います。

そういう私も時代小説初心者でね……

まさに時代小説初心者のための作品です。難しい言葉もあまり無く(人物名と地名はちょっと難しい)無門に至ってはほぼ現代人の言葉を使います。

この作品から時代小説を読み始めるのもアリだと思います、おススメですよ。

では、また!