「コロナの時代の僕ら」-未来を、過去を、そして自分を見失いそうになったとき読みたい一冊

「コロナの時代の僕ら」-未来を、過去を、そして自分を見失いそうになったとき読みたい一冊

2020年、新型コロナウイルスが流行したローマにて、作家パオロ・ジョルダーノによって綴られた27のエッセイを一冊にまとめたエッセイ集。日本語版にはあとがきとして「コロナウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」を収録。

というわけで、今回はパオロ・ジョルダーノ先生の「コロナの時代の僕ら」を紹介していきます。

これは「エッセイ集」であって、専門家によるコロナ対策ハウツー本ではない

いつだったか、特にやることもなくTwitterを見ていると、早川書房さんのツイートで今度、イタリアの作家がコロナについて書いた本を発売する旨の報告を発見しました。

「これは、買わねば……」

というのも、そのころ、私が住んでいる日本でもコロナの感染が広がっており、先にコロナが流行したイタリアで書かれた本であれば、コロナウイルスへ立ち向かうためのヒントのようなものが得られると思ったからです。

早速、通販サイトで予約し、発売日をちょっと過ぎて到着。第一印象は

「ん? 薄いな」

でした。エッセイ集が100ページ、あとがきを合わせても126ページです。しかも一行の文字数も少なめ。

「まあ、文字が多ければ良いというわけでもない」

と読み始めました。

 

読了後の感想を一言でまとめると、

「すごく良い本だけど、コロナに感染しないためのハウツー本じゃないんだから! 勘違いしないでよね!」

です。「そんな勘違いする人いる?」って感じですが、恥ずかしながら私は少し勘違いしてました。

ただ、「感染症対策」という意味ではこの本はある意味、効果があると思います。それは、後々。では、どの点が良かったか書いていきたいと思います。

現在進行形の感染症に「向き合う」ための本

日本で緊急事態宣言が出てからというもの、ニュースやワイドショーではコロナ関連の話題でもちきりです。スマホを見れば何となく自分が住んでいる県の感染者数を見て一喜一憂する毎日、疲れます。これが俗にいう「コロナ疲れ」といったものでしょうか。

しかし、なぜコロナ関連のニュースを見ると疲れてしまうのでしょうか? 私は、「確かなことが全くない」からだと思います。ワイドショーでは「あの薬が効くらしい」とか「検査を早く拡充すべき」という話が延々と繰り広げられており、SNSは……流石に見る気が起きませんね。

ワイドショーもSNSも悪いものではありません。しかし、このような緊急事態に陥るとここまで混乱するものなのかとため息が出てしまいます。

「コロナ」というキーワードから逃げ出したくなりますが、外出自粛、時短、自宅勤務、失業などなどで生活に多大な影響を及ぼす「コロナ」から完全に逃げ出すことは現在の日本国民では難しいでしょう。

そんな時、この本を私は読みました。

この本には「コロナ」にというより、題名の通り「コロナの時代の僕ら」に結びついた27編の興味深いエッセイが綴られています。著者の体験、数学、細菌などなど色々な方向から「コロナの時代の私たち」をあぶりだしていきます。

コロナから逃げるでもなく、戦うわけでもなく、ただ「向き合う」。この著者の姿勢を感じることで、私は不思議な安堵感を得られることができました。

孤独に寄り添う本

外出自粛で家の中でTVを見ても孤独感は無くなりません(何かTVを悪者にしているようですみません)。

ニュースやワイドショー、SNSは、情報は得られても、連帯感を得ることはできません、少なくとも私はそうです。

この本は著者の緊急事態下での日常や物事への思いなども綴られています。それを見て私は驚きました。

「すごく共感できる!」

ありきたりですが、国籍や年齢や学歴が違えど同じ人間なのだなとホッとさせられます。不思議と孤独感や焦燥感も軽くなった気がしました。

27編のエッセイで一番印象深いエッセイは私は「パン神」でした。政府、専門家、市民の関係性を綴ってあるエッセイですが、笑ってしまうほど共感できます。この「共感」といものを私は待ち望んでいたのかもしれません。

うぎゃぁぁもったいない! 著者の珠玉のあとがきは日本語訳版だけ!

「すげぇな……このあとがき」

著者のあとがきを読んだ後、訳の飯田亮介先生のあとがきを見ると、なんと著者のあとがきは日本語訳版に特別に追加されているようです。

「えっ? ということはこの著者のあとがきは他の国の訳には入っていないのか!」

話が脱線しますが、ゲームや映画のブルーレイなどで国内版だけ冷遇を受けるということがよくあります。あれには本当にがっかりするものです。

今回、著者あとがきが日本語訳版に特別ということを知ったとき、優越感のようなものは全く湧いてきませんでした。代わりに

「い、今すぐ違う訳のこの本に著者あとがきを追加すべきでは」

という気持ちが出てきました。「僕はわすれたくない」と、コロナ収束後の「僕ら」に対する熱い思いを記したあとがき、本当に素晴らしいあとがきです。

読書が苦手な人にもおすすめ

はじめに書いた通り、全て合わせて126ページで一行も短いので読みやすいです。

ただ、個人的にこの本は電子書籍より紙の本がおすすめです。電子書籍版がどうなっているかわかりませんが、文章の上下に余白があるのが、落ち着いた感じで私は好きです。

それでは、また!