「春にして君を離れ」-アガサ・クリスティーってやっぱりスゴイ。現代社会にもあてはまる家族間の問題を描き出す作品

「春にして君を離れ」-アガサ・クリスティーってやっぱりスゴイ。現代社会にもあてはまる家族間の問題を描き出す作品

ジョーン・スカダモアは理想的な主婦である。

弁護士である夫を支え、一男二女の子供たちを育て上げた。

バグダッドに住む次女バーバラが急病と知り、ジョーンは現地に向かった。幸いにもバーバラは回復したので、ジョーンはロンドンへと帰ることにする。

ジョーンは帰る途中の鉄道宿泊所で学友であったブランチ・ハガードと出会う。

老け込んだブランチを見て優越感に浸るジョーンであったが、そこから歯車が狂い始める。

汽車が止まったことにより、宿泊所にくぎ付けになってしまったジョーン。彼女は今までの夫との、子供たちとの間に起きた多くのことを回想し始めるが……

作品評価=★★★(最大三つ)



探偵ものではないクリスティー作品

今回の作品は以前紹介した「バーナード嬢曰く。」の五巻で紹介されていた本です。

1冊目・バーナード嬢曰く。

しかし、面白いですねバーナード嬢。読書する気が起きないときにこの漫画を読むと、途端に読書欲が湧き出てくるという素晴らしいマンガです!

話を戻しましょう。

アガサ・クリスティー先生の「春にして君を離れ」は推理小説ではありません。クリスティー作品というとポワロやミス・マープルという探偵がでてきて事件を解決するというものを想像してしまいますが、今作では探偵は出てこず、ジョーンという一般的な主婦が過去を回想するという物語になっています。

ネットで調べてみると、1944年に発表した時にはメアリ・ウェスコットという名義で発表したロマンス小説だったようです。愛の小説シリーズと言うらしいですがその中でも有名なのが今作みたいですね。

1944年に毒親ものとは

SNSやネットニュースで最近見かける「毒親」という単語、調べてみるとそのまんま子供の「毒になる親」のことでした。書店の本棚でも関連の本を結構見かけたりします。

ジョーンは完璧な主婦をこなしてきたつもりでしたが、学友ブランチとの会話、宿泊施設での回想により、自分がやってきたことに疑問を感じ始めます。夫が農場を始めたいと言ったとき止めたこと、娘や息子が問題を起こした時の対処、すべて正しいに違いない! しかし……。

何もない砂漠の中でジョーンが過去を思い出し、本当に正しかったのかと自問自答する場面は流石クリスティー、まさにミステリーです。

ジョーンは夫や子供たちに自分の正義を押し付けて生きてきました。ジョーンは「毒親」なのでしょうか?

何が子供の毒になるのか、それは子供の立場でしかわからないことなので何とも言えませんが、私はベルンハルト・シュリンク先生の作品「階段を下りる女」に出てくる主人公の言葉を思い出しました。

僕の妻はいつも、善の反対は悪ではなく、「よかれと思ってやること」だと言っていたものだ。

「あいつ」に読ませたい作品

「バーナード嬢曰く。」で登場人物たちが、全ての大人に読ませたい小説だと盛り上がります。

そこで、その中の一人がそういう行為がまさにジョーンと同じ行為をしていると発言します。「数十年後に自分の人生を見直すために読み返すのがいい」という結果に落ち着くのですが、彼らは高校生。もう年齢的には大人である私にとってはなかなかゾクッとさせられる作品でした。

ジョーンの行動を笑えるほど自分は善良な人間だっただろうか……

色々考えさせられますね。

最後に訳のことですが、非常に読みやすい訳で一気に読み終えることができました。非常に面白くおすすめです。

それでは、また!