「裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル」-女子×STALKER’S WORLD=最強

「裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル」-女子×STALKER’S WORLD=最強

大学生である紙越空魚(かみこしそらを)は自身が”裏世界”と呼ぶ空間で死にかけているところを仁科鳥子(にしなとりこ)と名乗る謎の美少女に助けてもらう。

空魚が死にかけていた原因はネットの怪異談にでてくる「くねくね」のせいであった。様々な怪異たちがはびこる”裏世界”を二人の女子が銃器片手に探索していく物語!

作品評価=★★(最大星★三つ)



何が起こるかわからない”裏世界”を探索……こういうの大好き!

今回紹介するのは宮澤伊織先生の「裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル」ですが、まず、この作品のもととなったであろう「ストーカー」という作品について触れておこうと思います。

ストーカー」とはストルガツキー兄弟によって書かれた1972年に発刊されたロシアの小説です。”ゾーン”と呼ばれる何が起こるかわからない地帯に侵入し遺物を持ち帰る「ストーカー」と呼ばれる人間を主人公にした物語です。

ストーカー」は1979年に映画化、独特な世界観は他の作品に影響をあたえています。

S.T.A.L.K.E.R. SHADOW OF CHERNOBYL」というPCゲームはこの作品をオマージュしてつくられていますし、以前紹介した「DARKER THAN BLACK-黒の契約者」もこの作品から着想を得たようです。

傑作アニメ「DARKER THAN BLACK」を紹介します

何があるのかわからない地帯に人類には計り知れない”何か”があるという物語は非常に面白いですね。そして「裏世界ピクニック」にもその要素が多分に盛り込まれており、「ストーカー」ファンにもお勧めできる作品となっています。ちなみに、「ストーカー」の原題は「路傍のピクニック」であり、著者のストーカー愛が伝わってきます。

ファイル毎の紹介

ファイル1:くねくねハンティング

ネット怪談で有名な「くねくね」を裏世界で見つけた空魚はくねくねの能力によって死にかけていた。鳥子の登場によって危機を脱し、くねくねを退けた二人はこの世のものとは思えない銀色の六面体の物質を見つけ、それがある人物に高く売れることを鳥子は空魚に話す。二人はくねくねをもう一度倒すため裏世界に入る。

「ストーカー」的異世界に日本のネット怪談を組み合わせたというのは興味深いです。ちょっと屈折した性格の空魚と真っすぐすぎる性格の鳥子の組み合わせがまた面白いですね。個人的にこのファイルで一番面白かったのは、鳥子の裏世界への入り方です。雑居ビルのエレベーターを指定した順番で押していくというものですが途中、ドアが開いたときに見えるものがマジで怖いです。ピクニックと題名についているのでもっとのほほんとした感じかと思いきや、結構エグい描写を入れてくるところがこの作品の面白さのひとつだと思います。

 

ファイル2:八尺様サバイバル

くねくねとの戦いで不思議な能力を得た二人。鳥子の目的が裏世界に消えた「冴月」の捜索であったことをしった空魚は二人で裏世界に入ることにする。冴月の捜索途中、銃を持った男と出会う。肋戸というその男は神隠しにあった妻を探していた。捜索を開始しようとする三人だったがそこは”グリッチ”と呼ばれる罠が張り巡らされていた……

とうとうでました「ネジ」! 異世界探索の必需品です。このファイルはPCゲーム「S.T.A.L.K.E.R. SHADOW OF CHERNOBYL」のオマージュが沢山散りばめられています。肋戸の武装がAKだったり、突然物体が過熱されるグリッチと呼ばれる罠があったり、肋戸が裏世界のことを”ゾーン”と言ったり。そして極めつけが「ネジ」です。ゲームでもネジを罠に投げつけ回避するシステムがあります。人に投げつけまくって遊ぶこともできますね。

今回のファイルもホラー要素は忘れられておらず、ドキッとする瞬間が用意されています。油断していたら「おおっ!」とさせられるので面白いです。裏世界専門家の小桜という新キャラも挿絵つきで登場。かなり良いキャラしています。

ファイル3:ステーション・フェブラリー

無事に帰還した二人は打ち上げをひらく。一時の休息を楽しむ二人だったが突然、裏世界へと入り込んでしまう。夜の裏世界で異形のものに追いかけられる二人の前に武装した集団が現れる。彼らは沖縄駐屯地に配備されている米兵であった……

いきなり話が大きくなるファイル3。巨大な異形のものだったり、米兵だったり、何というか映画の「ミスト」を連想させます。「きさらぎ駅」というのは全くの初耳でしたね。ネット怪談も色々あるものです。今回はホラー演出多めでホラー好きの私には嬉しい回でした。

ファイル4:時間、空間、おっさん

空魚と鳥子は冴月のことで喧嘩をしてしまう。鳥子は一人で裏世界に入ってしまったことが分かった空魚は小桜とともに裏世界へ強制的にとばされてしまう。果たして空魚は鳥子を見つけることができるのだろうか……

ここの内容はちょっと省いています。というのも何ともわかりにくいというか空魚の能力だったり、多くの謎が散りばめられています。この一巻の中では一番不気味な回かもしれません。しかし、空魚と鳥子の関係の変化など重要で面白い場面が多いのでまさに一巻の最後を締めるに相応しい回でした。まあ、一番は小桜の性格がわかるところが一番面白いんですけどね。

わからない、だからこそ面白い。

ファイルごとに完結していく今作ですが、毎回、なぜその異形のものたちがいたのかなどはっきりとしたことはあまりわかりません。しかし、私はそれがいいと思います。「ストーカー」然り、「DARKER THAN BLACK」然り。このタイプの物語は原因の究明をしてしまうと途端に興ざめしてしまうパターンが多いような気がします。

裏世界の正体を見極める物語が楽しみというより、裏世界という場所によってそれに関わる人々がどう変わっていくのか、空魚と鳥子の関係はどうなっていくのかという物語が私は楽しみですね。

 

それでは、また!

追記:二巻目の感想はこちら

「裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト」-空魚と鳥子の活躍に胸躍る第二巻